共育ステーションつむぎ 代表
髙良 久美子(たから くみこ)
2018年夏の事です。勤務先へ飛び込んできた方がいました。
「ミルクが無いですか?」「今日あげるミルクが無い方が相談に来ているんです。」
私は、休憩時間を使ってミルクを購入し、手渡ししました。
翌月もひと缶・・・。
2019年のある日の新聞に、他所の県で起きた悲しい現実が掲載されていました。
双子の赤ちゃん衰弱死、ミルク買えず
とっさに、「沖縄でも起きる!」と直感しました。この問題を正面から向き合うため沖縄全域のミルク支援の状況を調べました。
結果――、
支援対象が乳幼児であることに加え、ベビーミルク管理の難しさ(賞味期限・保管・在庫)、支援機関の制約等の理由から支援の死角になりやすく、実態把握も進んでいないことがわかりました。
2020年3月、「今日あげるミルクがないんです」
そう訴えてきた女性にこう言わなくてはなりませんでした。
「今日差しあげるミルクがないんです」背中の赤ん坊が泣きだしました。
我が子にミルクを飲ませてあげられない母親と、泣くことでしか空腹を訴えられない子ども。
その背中を見送ることしかできないとしたら、福祉の名が泣きます。身銭を切ってミルクを購入し、母親に持たせました。
後に共育ステーション つむぎのメイン活動となるベビーミルク支援のはじまりです。
翌月、別の女性が訪ねてきました。
「今日あげるミルクがないんです」「これから買いに行きますね」
ミルクを必要としている母子にミルクを手渡すことすらできない。
何度も振り返っては頭をたれる小さな背中を見送りながら、この問題の根深さを垣間見た気がしました。
栄養をミルクからしか摂れない赤ちゃんがミルクを飲めなければどうなるか――。
矢も楯もたまらず、知人・友人、同級生や先輩・後輩ほか関わる人すべてに実情と現況をお話し 、500円基金としてミルク代を寄付していただきました。
「今日あげるミルクがないんです」と訴えるお母さんに、「なんくるないさー」と言ってミルクを持たせてあげられる。
そんな沖縄を実現するため、共育ステーションつむぎを設立しました。
皆さまの善意により、これまで寄贈できたベビーミルクはなんと567缶!
これからもたくさんの「小さな命のつむぎ手」たちと協力して、天使たちが輝けるよう邁進していきます。